へうげもの四話
お馬揃えの日、商人たちは、将軍たちの行進の衣装から今後の商いの評価を決めていた。大切な日にどのような衣装に身を包むのかは、その人の考え方を色濃く映し出すものである。
お馬揃えが終了後、佐介と秀吉は宗易のもとを訪ねる。そこで、宗易の弟子は、佐介に対し、「そもそも、名物という言葉は、私ども社会の者が世に広めたもの。見た目の風情だけでなく、所有していた人物の品格や歴史を踏まえて価値を決めている。」と説く。確かに、名物とは、世に出てはじめて、名物となる。どんなに、素晴らしいものでも、世に出なければ素晴らしいと評されることはない。また、さほど素晴らしいものではなくとも、有名人が持っていたからという理由で、物の価値が上がることもある。世間でいう名物と言うのは、あいまいで、様々な事情に左右されやすいものなのかもしれない。
他方、佐介は、上記のように説く弟子から、茶入れについて尋ねられる。しかし、佐介は、茶入れの良さがわからなかった。その際、相手に嫌味を言われると分かっていながらも、知ったかぶりを止めて、正直に、分からないといって、相手に教えを乞いた。このように、分からないことは、分からないとして、相手に教えを乞うことのできる佐介の人格は、私自身も取り入れたいところである。
最後に、秀吉は、黒は、死をつかさどるものであり、誰も、黒をかっこいいとも欲しいとも思わないのに、なぜ、黒を好むのかと宗易に対して問い。これに対して、宗易は、「無駄を省い先が黒であり、その色が私の理想である。」という趣旨のことを述べる。そして、世に言う名物は、「全て渡来の品のため、それらの価値を破壊してでも、黒こそが嗜好だと証明したい。そして、この考え方は信長の下では叶わないが、私の道を知り、野心をともにするあなたが天下を取るならば叶う」と秀吉に言う。世にない自己流の考えを世の中の通説的地位にまでもっていきたいという宗易の欲深さ。そして、秀吉に天下を夢見させる、人身誘導術。ここまでのことを引き出すことのできる宗易から学ぶことは多い。